酒井 志朗 上智大学 理工学部 機能創造理工学科 准教授 |
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世の中には多種多様な物質があり、それぞれ色や硬さ、電気を通すか、磁石にくっつくか、などといった点で異なる性質を示します。 これらは全て原子がたくさん集まってできたものですが、原子の種類や組み合わせ、またその並び方によって性質が違ってくるのです。 この点をもっと具体的に、どういう原子をどう配置したらどのような性質が現れるか、ということを考えるのが物性理論と呼ばれる研究分野です。
私の研究対象の固体では、固体中を動き回る電子の振る舞いを理解することが重要です。 原子の種類や配置を変えたときの電子の動きや分布をコンピューター上でシミュレーションし、そのような電子が生み出す性質(絶縁体や磁石になったり、あるいは低温で超伝導を示すこともあります)を調べています。 特に、①原子の配置をちょっと変わったものにしたら電子の動きはどうなるか、②電子間にクーロン相互作用が強く働いていたらどうなるか、という問いを主要な研究テーマにしています。
①は、準結晶やアモルファスと呼ばれる固体の研究です。従来の固体物理学が主な対象としてきた「結晶」は、原子が周期的に(同じ構造の繰り返しという規則に従って)並んだ固体です。この「結晶」については、少なくとも電子間のクーロン相互作用が強くない場合においては既にかなり確立された理論があり、コンピューターシミュレーションで物質の多くの性質を定量的に計算できるところまで来ています。 一方で、世の中には原子が周期的ではない別の規則性に従って並んだ準結晶(2011年ノーベル化学賞の対象)や、不規則な構造をもつアモルファスと呼ばれる固体もあり、これらの性質についてはごく基本的なところについても確立した理論がほとんどなく、多くが未解明のまま残されています。 このような非周期的な構造が電子の運動にどのような影響を与えるか、また、その結果としてどのような物質の性質が現れるかということを研究しています。
②は強相関電子系と呼ばれ、お互いに強く相互作用しながら動き回る多数の電子が全体としてどのような性質を示すか、という問題(多体問題といいます)です。 例えば、銅酸化物高温超伝導体(1987年ノーベル物理学賞の対象)に代表される遷移金属酸化物中の電子は強相関電子系であると考えられ、超伝導以外にも磁性や金属-絶縁体転移など温度や圧力によっても変化する多彩な性質を示します。このような多彩な性質を理解し、また新しい性質を予測できるような理論を作ることが目標です。
英語ページではもう少し専門的な記述で研究内容を紹介しています。